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【人材育成の第一歩は「客観視」ができるかどうか】社員が自主的に育つスゴイ仕組み

人が育つか育たないかによって、会社の成長は決まります。
人が仕事を通じて成長するという一面だけでなく、働く人が自分の人生の中で、幸せの実感を持てるかどうかということも、まさに企業とともにあるものです。
その会社で働いて、努力をして、何らか自己充足ができる。自分が成長した、伸ばしてもらったという実感を多くの社員が持てる、そんな企業こそが素晴らしい企業ではないでしょうか。

ところがそれが全く感じられない。目標面接も育成面接も、儀式的で形式的。その場の20分なり30分という時間は、説教や叱責にすぎない。早くこの場から逃れたいと社員の多くが思う。そんな実態があるのです。
社員に、キャリアとは何かと問えば、「ポスト」「資格取得」「転職」といった言葉が返ってくることがほとんどです。どのような仕事をしたいか、その結果どのような人間になっていきたいか…仕事と人生を結びつけて将来への展望を抱いている人は稀です。

経営者の皆さんは、外に出れば、「人材育成が大切だ」「わが社も人材育成には当然、力を注いでいる」と言われているのではないでしょうか。しかし、実際の社員の声は違っています。
先に挙げた15の問題点(こちらの記事からどうぞ)に、一つも当てはまらない経営者がいるとすれば、それは非常にラッキーなことです。
しかし、そうではない人のほうが多いのではないでしょうか。

まずは、自社の人材育成の現実を見つめ直すことが、変革のスタートです

経営者が自ら動かなければ、わからないことも、進まないこともある

まずは現場で何が起こっていて、何ができていないのかを知ることです。

「人事」とは人と事と書きます。「人」は社員、「事」は出来事です。経営者は現場の人に関することと、仕事で起こっている出来事に関する情報に乏しいものです。人事について考えるとは、ただ制度を整えるだけではなく、まず業務そのものの実態を把握することです。

「解は現場にあり」です。やはり、ご自身が現場に足を運んで、自分の目
状をつかみ、判断することが大切なのです。
もちろん、部下から上がってくる報告を信用しないということではありません。ただ、人事についてはそれだけでは判断材料としては足りないのです。もっと言うのであれば、報告を聞いて、そのまま判断まで任せてはいないでしょうか。部下は上司の対応に納得しているでしょうか。危機感を持ったら一度、経営者の目線で判断する機会を設けるべきです。
そのためには、ときには自分自身で現場に降りていってください。部下の報告も信じながら、一方で、いま一度精査する目で現場を見て、現実を知らなくてはいけない。それができていないという点が、あらゆる「現場の問題」の根源だといえます。
もちろん、現場に行くといっても、たとえばただ工場のラインを視察するだけでは、何も見えてきません。従業員数が多くなれば、1対1の面接にすべて同席することもできないでしょう。ではどうするべきなのでしょうか。

廊下であれ執務スペースであれ、エレベーターの中であれ、社員に話しかけ、話を聞く。(状況に応じて)社員と懇親会を行う、幹部との交流会も行い、さまざまなコシュニケーションを設けることです。また、社員が腹を割って話せる雰囲気をまずつくり、上司として社員が言葉に出さない本音も察知していくことが重要です。

義務と化したコミュニケーションと悪しき習慣が社員の自主性を潰す

2番目に大事なポイントは、既存の体制を徹底的に見直すことです。
人事考課もそうですが、経営の仕組みも、また企業風土も、知らず知らずにできあがっていたさまざまな習慣のようなものによって歪められ、実は、社員の主体性や意欲をそいでいることが多いということです。

たとえば、出張に行って宿泊をすると、上司と必ず夕食をともにしなければならない暗黙のルールがあるとします。当然、お酒も飲み、場合によってはカラオケなどにも出かけて夜遅くまで交流する。社員とのコミュニケーションは非常に重要です。しかし、このような習慣は有効なコミュニケーションとはいえない場合も多いのです。食事に行ってする話は、なぜこんな話のために時間を費やさないといけないのだろうか、と社員が思う内容であることが多いものです。食事をしながら真正面から仕事、お客様、組織、将来、そして昼間の行き違いをほぐすような内容であれば、むしろ必要なことです。前からやっていることを漫然と問題意識もなく続けている「習慣」が、実際には社員には目的のない我慢を強いる「儀式」の一つとなってしまっていることが、組織にはたくさんあるのです。

3番目のポイントは、価値観の違いや、それによる行動の違いに気がついていないということでしょう。

第1章で述べた「個性」の話と同じです。(こちらの記事からどうぞ企業の価値観を決めるのは経営理念です。そこで示された価値観には経営者も社員も皆、重きを置く必要があります。それによって経営の方向性もそれに必要な考え方も決まってきます。これを基盤として、社員が、いかに自主性を発揮できる環境づくりをするかということです。

いま一度立ち返って、経営理念という大きなベクトルの中で、主体的に判断して行動することが求められます。そういった環境でこそ、一人ひとりの自主性というものが発揮されるのです。

こういった点をうまくつなげるために重要なのが人事考課です。
人事考課は、経営理念から現場におけるそれぞれの社員の行動までをつなぎ、社員の成長を促す仕組みであるべきものです。それが現状では中身のない儀式と化してしまっています。

「社員が自主的に育つスゴイ仕組み」(幻冬舎)
著者:弊社代表 末永春秀